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頭痛

頭痛の9割は心因性

100人いれば100人が頭痛を経験しています。つまり、私を含めてみなさんが頭痛持ちというわけです。頭痛の原因はさまざまですが、一般に頭が痛いといって外来を訪れる患者さんのうち、手術の対象になるのはきわめて少ないもの。
その約9割以上は、ストレスなどによる心因性の頭頸部緊張性(肩こりなどによる)頭痛です。

しかし、厚生省のデータによると、平成5年の1年間で、頭痛の裏に潜む重大な病気のために4500人の方が命を落としています。
ということは、たかが頭痛と甘くみてはいけないのです。

危ない頭痛をチェックする

脳卒中は脳の血管の病気

脳の血管の病気(脳血管障害)は、さまざまです。
脳の小さな血管が高血圧のために切れてしまうと、脳出血(高血圧性脳出血)。
脳の血管に小さなコブ(脳動脈瘤)ができ、それが破裂するとクモ膜下出血。
脳の血管が動脈硬化などのために詰まると脳梗塞や脳血栓になります。
これらの病気を総称して、一般に脳卒中と呼んでいます。

脳卒中には、そのほとんどの場合、激しい頭の痛みと嘔吐(吐き気があったり、吐いてしまったりする)を伴います。
ところで、脳そのものは痛みを感じません(予断ですが、このため昔は大きな手術も局所麻酔でやっていました)。痛みを感じるのは、脳のまわりの神経や膜、血管などです。

では、なぜこのように頭が痛くなるのでしょうか。それは、脳が腫れてしまうからです。
脳は固い頭蓋骨で囲まれています。
そのため、脳のある部分が腫れると、圧力の変化は脳全体に波及します。この腫れによって脳を頭蓋骨につなぎとめている組織が引っ張られたり、圧迫されたりします。
その結果、痛みを感じる部分が刺激され、頭痛が起こると考えられています。

脳卒中が怖いのは、発症するまではまったく無症状である場合が多く、ある日突然、発症するという点です。
そのため、このあとに説明する脳腫瘍のように、症状から病気を発見することが難しいのです。
さらにやっかいなのは、一度破壊されてしまった脳細胞は元には戻らないということ。例えば、脳出血や脳梗塞によって脳細胞が壊されてしまうと、そこが持っていた機能は失われてしまい、元には戻りません。
これがいわゆる後遺症となります。麻痺が残ったり、言葉に障害があらわれたりするわけです。あとは、リハビリテーションを行い、残っている機能を活用して生活を維持していくしか手はないのです。

クモ膜下出血は死亡率も高く、脳血管障害の中でも最も厄介なものです。クモ膜下出血は、例外もありますが、脳の血管にできる小さな瘤(能動脈瘤)が破裂することによって起こります。
クモ膜下出血が厄介なのは、二段がまえ、三段がまえで症状が悪化することです。まず、出血そのものによる脳へのダメージがあります。このとき破裂した動脈瘤は、いわゆる「かさぶた」のようなもので一時的に止血されます。
もし最初の破裂で止血されなければ、そのまま命を落としてしまいます。この「かさぶた」はとれやすく、これがとれると2回目、3回目の再出血となります。

クモ膜下出血の手術というのは、この動脈瘤の"根っこ"を小さなクリップでつまみ、2回目、3回目の再出血を防ぐのが目的です。ところが、この手術がうまくいっても、「脳血管れん縮」という耳慣れない事態が発生します。
「脳血管れん縮」とは、出血1〜2週間をピークに脳の血管が細くなることをいいます。このプロセスは、はっきりとは解明されていませんが、クモ膜下出血を起こすと、脳の血管の周囲に赤血球が付着し、これが血管を収縮させるようです。
その結果、脳に血液が行かなくなります。
つまり、脳梗塞が起こるわけです。そのため、言葉が失われたり、体に麻痺が残ったり、最悪の場合には死に至ることも少なくないのです。
出血と梗塞の両方が起こってしまうのが、クモ膜下出血の恐ろしいところです。

以上のようなわけで、クモ膜下出血は、手術の技術が進んでいるとはいえ、いまだに5人に1人くらいしか社会復帰ができないのが現状です。

検査でほぼ100%発見できる脳腫瘍

脳腫瘍は簡単にいえば、脳にできる"おでき"です。脳腫瘍の特徴は、長期にわたって少しずつ進行すること。そして、ある限界を超えた時点で、頭が痛くなったり、吐き気がしたり、あるいは、吐いてしまったりします。

また、人によっては、視力障害が出てきたりします。幸いなことにある程度の大きさを持った腫瘍は、CTスキャン(コンピュータによるレントゲン断層撮影)やMRI(磁力線による断層撮影)で、ほぼ100%に近い数字で発見できます。
現在、日本では、脳神経外科にやってくる頭痛を訴える患者さんに対して、CTスキャンの施行率がかなり高くなっているため、脳腫瘍に関してはほぼ発見できる状態にあるのです。

全身の血管を調べない脳ドックはダメ

先ほども述べましたが、脳の血管の病気はALL OR NOTHING、発症するまではまったく無症状であることが多いのです。では、どのように予防したらよいのでしょうか。

脳出血に関しては高血圧や動脈硬化が大きな要因とされています。
脳梗塞もその原因の90%が動脈硬化といわれています。
つまり、このような高血圧や動脈硬化を起こすような食生活を含めたライフスタイルの人、糖尿病などの病気を持っている人は要注意だ、ということができます。
私たちは、脳の病気は体とは別に頭部だけで独立したものと考えがちですが、これは間違いです。頭の血管は体全体に通じているもの。
頭だけ、あるいは頭を除いた体だけに病気が存在するわけではないのです。

逆にいえば、このように全身の血管の検索を行わないような脳ドックは、無駄におカネを捨てるだけだということができます。繰り返しになりますが、頭だけに注意を向けるのではなく、体全体の血管系の一部としての脳血管を考えなければ意味がないのです。

クモ膜下出血の原因になる脳動脈瘤に関して言えば、最近のデータでは、少ない報告で100人に対して1人、多い報告では10人に脳動脈瘤があるといわれています。
平均すれば、だいたい5〜6人に脳動脈瘤があるということができるでしょう。
しかし、すべての動脈瘤が破れてクモ膜下出血になるわけではありません。
実際には、脳神経外科の統計では、人口10万人に対して年間12人がクモ膜下出血を起こすといわれています。
しかし、これは脳神経外科のみの統計。内科の統計と合わせると、発症する確率は倍に増えることがわかっています。

脳動脈瘤ができる原因には、生まれつき動脈瘤が存在するという先天説と、動脈硬化などが原因でできる後天説の二つがあります。
しかし、まだ結論は出ていません。脳動脈瘤に関してはその死亡率の高さに比べ、わかっていることは少なく、要因を特定するまでに至っていないのが現状です。
タバコやお酒、高血圧などをあげる専門家もいますが、真偽のほどは不明です。

命に関わる3つの症状

それでは、このような脳の病気が、どんなときに発症するのでしょうか。
残念ながら、はっきりとしたことはまだわかっていません。ある人は夜間に発症することが多いといい、またある人は、セックスのときが多いといいます。
また、タバコやお酒がいけないという人もいますが、確定的なことは解明されていないのが現状です。

以前、私のところに、ある新聞社の医療担当の記者の方が取材にやってこられました。
取材のついでに彼は一枚のMRA(MRIによる血管撮影)の写真を私に見せました。
これには脳動脈瘤が写っていました。脳ドックの取材で彼自身がドックを体験したところ脳動脈瘤が発見されたというわけです。
しかし、彼が受けたドックの見解では手術は必要なし。私は手術をした方が安全という意見。二つ解は違っていたのです。
すったもんだの末、彼は検査、手術に踏み切りました。
その最大の理由が、私が何気なく言った「そろそろ厄年なのですから」という言葉だったそうです。最終的に決断するのは患者さんですが、いくら難しい理由を並べたところで納得していただけるわけではありません。
このように「そろそろ厄年なのですから」という一言が聞くこともあります。患者さんの決断する根拠は、案外そんなものかもしれません。
もちろん手術はうまくいき、彼も元気に仕事を続けています。

いずれにせよ、予期せぬときに起こるのが病気です。いろいろな病気の確立も単に確率でしかなく、ご本人にとってはやはりコインの裏表、起こるか起こらないかは50%ということになります。
そういう意味では、何かの機会に検査を受けておくことをお勧めします。
その際は、脳ドックだけでなく心臓、動脈、血液の検査なども併せて行うことがベストといえます。
頭痛にはさまざまな種類がありますが、とくに注意したいのは、

(1)朝、起き抜けに痛む頭痛
(2)突然、激しく痛み、吐き気を伴う頭痛
(3)手足のしびれや麻痺を伴う頭痛

これらは「命にかかわる頭痛」になりかねません。けっしてあなどってはいけないのです。

往診実例 【脳検査は怖くない】

脳の検査は痛みはなく、保険でOK

往診したのは33歳の会社員の中山(仮名)さん。
朝、起きたときに、こめかみから目の奥にかけて鈍痛があるというのです。
朝、起き抜けに頭が痛いというのは、危険な頭痛の一つと考えられます。
それは、脳腫瘍の可能性があるからです。
脳の圧力が高くなると痛みを伴いますが、普通、脳の圧力は寝ているときの方が高くなります。ですから朝起きたときに頭痛がするというのは、脳腫瘍を疑ってかかったほうがいいのです。

さっそく往診に伺いました。中山さんは、朝、起きたときに後頭部がズキズキとし、両方のこめかみが痛み、鈍痛がすると訴えています。
頭痛は午前中いっぱいまで続き、午後になるとやわらぐようです。持病はとくにないのですが、目は左が1.0 右が0.5。肩こり、腰痛にも悩まされているといいます。

脳神経の簡単なチェックと眼底鏡での検査(眼の奥を見ることで、脳圧がある程度わかります)血圧の測定を行なったところ、ほぼ問題のない頭痛であることがわかりました。
しかし、これだけでは100%ではないので、MRIの検査を受けてもらうことになりました。
検査の結果は、やはり異常なし。
ところが首に椎間板ヘルニアのきわめて初期の兆候が1ヵ所、確認できました。
頭はボーリングのボールほどの重さがあります。これを首の骨と筋肉で支えているわけです。そのために首筋がこったり、痛かったりするのです。
そして頭痛の引き金にもなっていたのです。中山さんの頭痛は筋緊張性の頭痛。
幸いにも命にかかわる頭痛ではありませんでした。

よく、MRIやCTの検査というと、そんなに大げさなことをされると怖いという感じを持たれる方が多いようですが、そういうことはありません。
脳の検査は、痛くないものがほとんどです。注射をされたり、カメラを飲み込んだりというような苦痛はありません。
しかも、私たち脳神経外科医にとってMRIやCTは、いわば聴診器のようなもの。
ごく普通に使う機材です。ですから、必要以上に恐れることはないのです。
検査の費用も保険適用で3000円ほど。
自分の頭痛のタイプを正確に知るためにも、検査を受けられることをお勧めします。


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